発行日:2022年11月1日
定価:1,000円(税込)
● 新しい時代のギフト ギフトが彩る豊かな暮らし
● 特別企画「ホームファッションとオムニチャネル」
● 日本のギフト業界のグッドパートナー 台湾と香港
百貨店のギフト売り場というと、中元・歳暮の特設売り場が思い浮かぶというのは、もう古い感覚なのかもしれない。パーソナルギフト的な商材が中心になってきており、それは他者へのプレゼントに使うことも多いが、どちらかというと“自分へのご褒美”のような感覚で購買されることが多いようだ。
今回取材した三越伊勢丹の売り場では「ギフトはデイリーな生活の延長線上にある」と捉えているし、西武池袋店の場合も「今の若年層のライフスタイルに合ったもの、日常の生活に取り入れ易いもので、ちょっとしたギフトにし易いものを揃えた」という。
いずれにせよ、百貨店は若い購買層を開拓するためにギフトの分野においても工夫を凝らした売り場を開発することに余念がない。
今月号ではそのような百貨店のギフトMD戦略に加えて、歳暮とチョイスギフトの最新調査の結果を掲載する。
ギフトとは、さまざまな形態があるが“贈る”という行為は、贈り手の思いを伝えるものであり、同時にその人のセンスを表現する機会でもある。
どの分野のギフトでも、時代に沿った新しい傾向が見えてくる。今月号の記事からそれを汲み取っていただければ幸いだ。
2022年は「ホームファッション(HF)」分野におけるオムニチャネル元年と言えるかもしれない。
住関連はもともとネットとの親和性が比較的高い分野だ。経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば「生活雑貨、家具、インテリア」の21年のEC化率は28.25%。大手小売業もネットスーパーに苦戦するなど、なかなかEC化が進んでこなかった「食品、飲料、酒類」(21年3.77%)はもちろんZOZOTOWNが風穴を開けてからネット活用が進んできた「衣類・服飾雑貨」(21年21.15%)」と比べても、そのEC化率は高い。
また19年と21年のそれぞれのEC化率から分かる通り、コロナ禍はデジタルシフトを加速させた。
特に伸びが顕著なのはこの2年間で7ポイント以上EC化率が上昇した「衣類・服飾雑貨」だが、もともとEC化率が高かった「生活雑貨、家具、インテリア」も5ポイント近く上昇している。
てもいいのかもしれない。
「HF」においては、ニトリや無印良品、イケアなどの製造小売業(SPA)勢による寡占化が進んでいると言われて久しいが、各社は「EC化」とともに実店舗とEC、リアルとネットの融合を図るオムニチャネルの取り組みを進めてきている。
また例えば、総合スーパー最大手のイオンリテールと近年拡大を続けてきたオンライン家具・インテリアのLOWYAの協業事例や寝具大手の西川によるサブスクリプションサービスなど3社以外でもHFのオムニチャネルの好事例が生まれてきている。
誤解を恐れずに書けば、コロナ禍での消費行動の変化とオムニチャネル化の進行は、SPA以外のHF関連企業に福音をもたらすかもしれない。
2023年2月15日(水)~17日(金)に開催される第95回東京インターナショナル・ギフト・ショー春2023は「オムニチャネルで日本経済の再生をPART2」をテーマに東京ビッグサイトで開催される。
本誌ではギフト・ショーの注目フェアの一つでもあるホームファッションマーケットの現状やネットとリアルを融合させた最新の取り組み事例、そして今後の展望について分析している。
日本のギフト、雑貨の業界にとって、台湾と香港は長くグッドパートナーである。特に、今から30年ぐらい前においては、雑貨の売り場において並んでいる製品のかなりの割合がこの2つのエリアからものであった。
日本の業者も当地で開催される展示会にでかけては、OEMによる製造を依頼する業者とコンタクトを取り、そこから生まれる製品がやがて我が国で流通するようになることがメインストリームであったと言えるだろう。
中国本土との国交が成立し、それに伴って、この2つのエリアとの付き合いも、どちらかというと中国本土へのゲートウェイーのような存在に変わってきたものの、それでも、中国人のメンタリティを知り尽くしている業者に間に入ってもらうほうが安心ということもあり、以前と同じように密接な付き合いは続いている。
これらのエリアで生産される雑貨系統の消費財は、従来、どちらかといえば、プレミアム・ノベルティ的なものが多かったが、ライフスタイル提案型の、デザイン志向の製品も増えている。台湾も香港も現地ではコンセプトショップのようなエッジの効いたリテールも増え、台湾の誠品生活のように世界的に評価される高感度なストアを展開する例もある。
政治的には大きな障害を抱え、とかく不安視されることも多いが、この両エリアにおける産業の在り方が、我々の雑貨業界に与えるインパクトは依然、大きなものがある。
今月号では台湾貿易センター 東京事務所の鄧之誠所長と、香港貿易発展局 東京事務所所長の伊東正裕所長に、インタビューと9月のギフト・ショーで行われたセミナーの再録というかたちで、業界の現状を語っていただいた。